『十一人の賊軍』は、幕末の戊辰戦争を背景に、戦場に駆り出された罪人たちの壮絶な戦いを描いた時代劇アクション映画である。実際の歴史に基づいた物語ながら、エンターテインメント性も兼ね備えた作品として、多くの映画ファンの関心を集めている。
物語の中心となるのは、官軍(新政府軍)と旧幕府軍の板挟みになった新発田藩。この藩を守るため、家老・溝口内匠(阿部サダヲ)は大胆な策略を巡らせる。その鍵となるのが、処刑を待つ罪人たち。彼らを戦力として利用し、砦を守るという過酷な任務を与えた上で、最終的には彼らをも犠牲にしようとする。この非情な策のもと、罪人たちは己の運命と向き合いながら、数で圧倒する官軍に挑んでいく。
主演を務めるのは、山田孝之(罪人・政役)と仲野太賀(剣術道場主・鷲尾兵士郎役)。さらに阿部サダヲ、尾上右近、鞘師里保、本山力といった実力派キャストが集結し、それぞれが濃密なキャラクターを演じている。
本作の魅力は、剣と銃が交錯するリアルな戦闘シーンだけでなく、「生きること」「信じること」「裏切りと忠誠」といったテーマが色濃く描かれている点にある。
『七人の侍』や『十三人の刺客』のような集団抗争劇を彷彿とさせる展開と、幕末の動乱を映し出す重厚なストーリーが融合し、観る者の心を揺さぶる作品となっている。
<十一人の賊軍 予告編>
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『十一人の賊軍』の内容考察
考察ポイント1:新発田藩の裏切りと歴史的背景
戊辰戦争における新発田藩の立ち位置
戊辰戦争は、明治政府軍(官軍)と旧幕府軍(賊軍)の間で繰り広げられた戦いであり、多くの藩がどちらに付くかを決断しなければならなかった。新発田藩はもともと奥羽越列藩同盟に加入し、表向きは旧幕府軍側に属していた。しかし、藩内では新政府軍に寝返る動きがあり、家老・溝口内匠は密かに官軍と連携を取っていた。
新発田藩の立場は非常に厳しく、地理的に周囲を旧幕府軍の同盟藩に囲まれていたため、表立って官軍に味方することは困難だった。そのため、一時的に同盟軍と共闘する姿勢を見せつつ、最終的には官軍に寝返るという策を取った。この決断により、新発田藩は戦火から城下町を守ることができた一方で、「裏切り者」としての歴史を背負うことにもなった。
溝口内匠の策略とその影響
溝口内匠は新発田藩の家老として、藩の存続を最優先に考えていた。戊辰戦争の混乱の中、彼は官軍と旧幕府軍の間で揺れる新発田藩を守るため、極めて計算高い策略を立てる。
彼の作戦の核心は、表向きは旧幕府軍の同盟軍として戦うふりをしながら、実際には官軍に寝返るタイミングを狙うことだった。そのために、戦力として罪人たちを利用するという冷酷な決断を下した。彼らには「砦を守り抜けば無罪放免」と約束し、旧幕府軍の進軍を食い止める役割を押し付けた。
しかし、この約束ははじめから守る気がなかった。罪人たちが官軍と戦うことで、旧幕府軍には「新発田藩が共闘している」と見せかける一方、官軍には「罪人たちの反乱であり、藩の意志ではない」と釈明することで、戦後の新発田藩の生存を確実にしようとしたのである。
結果的に、彼の策略は成功し、新発田藩は官軍側につくことで戦火を免れた。しかし、罪人たちは見捨てられ、戦場で命を落とすことになる。さらに、彼の冷徹な判断は、最終的に自身の娘の死という大きな犠牲を生むことになり、皮肉にも彼の私的な幸福を奪う結果となった。
奥羽越列藩同盟との関係
奥羽越列藩同盟は、戊辰戦争において旧幕府軍を支持する東北・北陸地方の諸藩によって結成された軍事同盟であり、官軍と戦うために組織された。新発田藩もこの同盟に参加していたが、実際には官軍への寝返りを画策しており、複雑な立場に置かれていた。
同盟に加盟することで、新発田藩は一時的に旧幕府軍側の支持を得ることができたが、内心では官軍と連絡を取りながら機会を伺っていた。そのため、旧幕府軍の同盟軍が新発田藩に援軍を求めてきた際には、藩として直接戦列に加わることを避け、戦場から距離を取る動きを見せていた。
しかし、奥羽越列藩同盟の中には新発田藩の動向を疑う者も多く、同盟軍との関係は決して強固なものではなかった。最終的に新発田藩は官軍側につき、旧幕府軍との戦闘を回避したが、これにより同盟軍の崩壊を早める一因となったとされている。この新発田藩の行動は、戦後の藩の存続を確保する上では有効だったが、「裏切り者」としての評価を残し、歴史の中で議論の的となっている。
考察ポイント2:登場人物の動機とキャラクター分析
罪人たちの生き様と選択
砦での戦いに駆り出された罪人たちは、それぞれが異なる過去を抱えながらも、極限の状況下で生き抜く道を模索していた。彼らの罪は、詐欺や強盗、殺人など多岐にわたるが、その背景には時代の流れや社会の歪みが影響していた者も多かった。
最も注目すべきは、山田孝之が演じる政の生き様だ。彼は新発田藩士に妻を寝取られ、その怒りから藩士を殺害し罪人となった。戦いの最中でも、自分の目的はあくまで「生き延びること」であり、砦の戦いに対して消極的な姿勢を貫く。しかし、戦友との関わりや戦場での経験を通じて、彼の心境には変化が生じていく。
また、爺っつぁん(本山力)やイカサマ師(尾上右近)、女火付け犯のなつ(鞘師里保)といったキャラクターたちも、それぞれのスタイルで戦いに臨む。戦場では、これまでの生き方を貫く者もいれば、新たな価値観を見出し最期を迎える者もいた。
彼ら罪人たちの行動は単なる自己保存ではなく、次第に仲間との絆や誇りをかけた戦いへと変わっていく。無謀な戦いの中でも彼らは己の信念を貫き、結果としてそれぞれの選択が生死を分けることになる。彼らが辿った道は、たとえ罪人として始まったとしても、戦いの中で見せた勇気と信念によって「賊軍」としての誇りへと昇華していった。
鷲尾兵士郎の成長と決意
新発田藩士であり、剣術道場の師範でもある鷲尾兵士郎は、最初は藩命に従い、罪人たちとともに砦で官軍を迎え撃つ役割を担っていた。彼は新発田藩の行動に疑問を抱きながらも、武士としての誇りと責務を果たそうと奮闘する。
しかし、戦いを通じて鷲尾の考え方は大きく変わっていく。彼は罪人たちと共に戦う中で、彼らが単なる無法者ではなく、それぞれに事情や信念を持っていることを知る。特に、政(山田孝之)との関係は彼の価値観を揺るがせる大きな要因となった。
戦いの終盤、彼は自ら「十一人目の賊軍」と名乗り、罪人たちと完全に運命を共にする決断を下す。この決意の背景には、藩の策略に利用されながらも必死に戦う仲間への敬意、そして武士としての本分を超えた正義への目覚めがあった。
彼の最期は、まさに武士道を体現するものだった。溝口内匠の裏切りを知った彼は、剣を構え単身で彼に挑む。しかし、冷徹な現実の前に敗れ去り、銃弾に倒れる。彼の最期の姿は、剣を構えたまま倒れる壮絶なものであり、まさに時代が移り変わる瞬間を象徴していた。
鷲尾は戦いの中で成長し、単なる藩の命令に従う武士から、信念を持って戦う「賊軍」の一員へと変貌した。彼の決意と最期は、本作の中でも最も象徴的な場面の一つとなっている。
溝口内匠の非情な決断の裏側
溝口内匠は、家老として藩の存続を第一に考えた結果、冷徹ともいえる決断を下し続けた。彼の選択はすべて新発田藩を守るためであり、そのためには手段を選ばなかった。
彼の非情さが際立つのは、罪人たちに「砦を守り抜けば無罪放免」と約束しながらも、実際には最初から見捨てるつもりだった点だ。彼らを戦わせることで、旧幕府軍には藩が協力しているように見せかけ、官軍には「反乱分子を排除する」という名目で藩の立場を守ろうとした。罪人たちは利用されるだけの存在であり、彼らの生存は最初から考慮されていなかった。
また、旧幕府軍の疑念を払拭するために、藩内でコレラ患者を「見せしめ」として斬首する冷酷な手段を取る。この行為は、彼の非情さを象徴すると同時に、武士としての道を外れた策謀家としての一面を浮き彫りにした。
しかし、彼の行動がすべて計算通りに進んだわけではない。娘婿である入江数馬が、罪人たちへの裏切りを知って戦死し、さらに娘自身もその悲劇を受けて自害することとなる。この一連の出来事によって、溝口は藩を守るために多くを犠牲にし、その代償として自身の家族まで失うこととなった。
溝口内匠は冷酷な政治家でありながら、結果的に誰よりも大きな痛みを背負うことになった人物である。彼の非情な決断は、藩を守るための最善策だったかもしれないが、個人としての幸福を大きく犠牲にするものでもあった。
『十一人の賊軍』はこんな人におすすめ
歴史を深く考察したい人
『十一人の賊軍』は、単なる時代劇アクションではなく、幕末の混乱期における政治的駆け引きや、武士道と現実の狭間で苦悩する人々の姿を描いた作品である。新発田藩の寝返りがもたらした影響や、奥羽越列藩同盟との関係、さらには戦争が生み出した個々のドラマに興味がある人にとって、非常に考察しがいのある内容となっている。
また、史実をもとにしたフィクションであるため、戊辰戦争や当時の政治情勢を深掘りしたい人にとっては、より一層楽しめるだろう。作品を観た後に、新発田藩や奥羽越列藩同盟について調べることで、より理解が深まり、歴史の面白さを再認識することができる。
迫力ある時代劇アクションが好きな人
本作の最大の魅力のひとつは、息をのむような時代劇アクションだ。特に砦で繰り広げられる激闘シーンは、刀や槍を使った殺陣はもちろん、火薬を利用した爆破シーンまで圧巻の迫力で描かれている。
仲野太賀演じる鷲尾兵士郎の剣さばきは、初の時代劇とは思えないほどキレがあり、武士としての矜持を感じさせる。また、槍の達人である爺っつぁん(本山力)の戦いぶりはまさに職人技であり、彼の熟練の技が光るシーンが随所に散りばめられている。
さらに、戦闘シーンではリアルな泥臭さが強調されており、命を懸けた戦いの凄惨さが伝わってくる。緻密に計算された戦術と圧倒的な戦力差の中で、どのように戦局が展開していくのか、手に汗握る展開が続く。
派手なエフェクトや過剰な演出ではなく、骨太なアクションとリアリティのある戦闘シーンを求める人にとって、見応えのある作品となっている。時代劇ファンはもちろん、激しいアクションが好きな人にもおすすめの作品だ。
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『十一人の賊軍』作品情報
解説・あらすじ
江戸幕府から明治政府へと政権が移りかわる中で起こった戊辰戦争を背景に、罪人たちが藩の命令により決死の任に就く姿を描いた時代劇アクション。「日本侠客伝」「仁義なき戦い」シリーズなどで知られる名脚本家の笠原和夫が残した幻のプロットを、「孤狼の血」「碁盤斬り」の白石和彌が監督、山田孝之と仲野太賀が主演を務めて映画化した。
1868年、江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜を擁する旧幕府軍と、薩摩藩・長州藩を中心とする新政府軍(官軍)の間で争われた戊辰戦争。そのさなか、新政府軍と対立する奥羽越列藩同盟に加わっていた新発田藩(現在の新潟県新発田市)で繰り広げられた、同盟への裏切りのエピソードをもとに、捕らえられていた罪人たちが、新発田藩の命運を握る、ある砦を守る任に就き、壮絶な戦いに身を投じる姿を描く。
山田孝之が、妻を寝取られた怒りから新発田藩士を殺害して罪人となり、砦を守り抜けば無罪放免の条件で決死隊として戦場に駆り出される駕籠かき人足の政(まさ)を演じ、仲野太賀は、新発田の地を守るため罪人たちと共に戦場に赴く剣術道場の道場主・鷲尾兵士郎役を務める。彼らとともに決死隊となる罪人たちを尾上右近、鞘師里保、佐久本宝、千原せいじ、岡山天音、松浦祐也、一ノ瀬颯、小柳亮太、本山力が演じ、そのほかにも野村周平、音尾琢真、玉木宏、阿部サダヲら豪華キャストが共演。2024年製作/155分/PG12/日本
配給:東映
劇場公開日:2024年11月1日
みどころ
『十一人の賊軍』の見どころは、歴史的背景を忠実に描きつつも、エンターテインメント性を強く押し出した点にある。以下の3つのポイントに注目すると、より一層楽しめるだろう。
1. 迫力満点のアクションシーン
戦闘シーンは大迫力で、特に刀と銃が入り乱れる戦闘のリアリティが際立つ。罪人たちが砦で戦う場面では、彼らの泥臭い戦い方や、時代劇ならではの剣戟が見どころとなっている。仲野太賀演じる鷲尾兵士郎の剣捌きや、本山力演じる爺っつぁんの槍の技は、まさに時代劇ファン必見のシーンだ。
2. 重厚なドラマとキャラクター描写
単なるアクション作品ではなく、登場人物一人ひとりの背景がしっかりと描かれている点も魅力の一つだ。罪人たちはそれぞれ異なる理由で処刑を待つ身であり、彼らの生き様や信念が戦いの中で浮かび上がる。また、家老・溝口内匠(阿部サダヲ)が下す冷酷な決断とその代償は、単なる悪役ではない深みを持ったキャラクターとして物語に緊張感をもたらす。
3. 「裏切り」と「忠誠」を描く歴史的視点
新発田藩の寝返りは、戊辰戦争における実際の出来事に基づいており、歴史的な視点でも興味深い。藩を守るための戦略とはいえ、多くの人々が翻弄され、犠牲になっていく様は、単なる戦争映画ではなく、時代の流れに飲み込まれる個々の運命を描いたヒューマンドラマとしても見応えがある。
このように、『十一人の賊軍』は、アクション・ドラマ・歴史的背景の三拍子が揃った作品となっており、観る人によって異なる楽しみ方ができる点が大きな魅力だ。
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まとめ
『十一人の賊軍』は、戊辰戦争という激動の時代を舞台に、戦乱に翻弄されながらも必死に生き抜こうとする罪人たちの姿を描いた歴史アクション映画である。新発田藩の裏切りという史実をもとに、政治的な駆け引きと個々の人間ドラマが緻密に絡み合い、観る者に深い余韻を残す作品となっている。
本作の魅力は、緊張感あふれる戦闘シーン、キャラクターたちのドラマ、そして歴史的背景を活かした物語にある。特に砦で繰り広げられる戦いの迫力は圧巻で、泥臭くも魂を燃やすような戦いが展開される。また、仲野太賀が演じる鷲尾兵士郎の成長と最期の決断、山田孝之演じる政の心の変化、阿部サダヲが演じる溝口内匠の冷徹な策謀とその代償など、登場人物の心理描写が丁寧に描かれている点も見逃せない。
歴史考察としても興味深く、新発田藩がどのようにして官軍に寝返ったのか、そしてその決断が藩や人々にどのような影響を及ぼしたのかを考察する余地が多い作品だ。時代劇ファンはもちろん、歴史好きや骨太なドラマを求める人にもおすすめできる。
迫力のアクション、濃密な人間ドラマ、そして歴史的背景の奥深さが融合した『十一人の賊軍』。
ぜひこの作品を観て、幕末という時代に翻弄された人々の生き様を体感してほしい。
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