『室井慎次 敗れざる者』は、かつて「踊る大捜査線」シリーズで活躍した室井慎次を主人公にした最新作。警察組織改革の夢を果たせぬまま定年前に退職し、秋田の田舎で静かな暮らしを送る室井が、新たな事件と対峙する物語です。
本作は前後編の二部作の前編にあたり、室井の新たな人生と、彼が里親として迎えた少年たちとの関係が丁寧に描かれています。一見するとスローペースな展開ながらも、過去の事件とのつながりや、シリーズファンには懐かしい要素が散りばめられており、じっくりと楽しめる内容になっています。
「踊る大捜査線」シリーズを観てきた人はもちろんのこと、新たにこの作品に触れる人にとっても、室井慎次という人物の生き様が感じられる一作です。

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室井慎次 敗れざる者 みんなの感想評価レビュー
評価・感想レビュー元サイト:映画.com
評判が良い点
室井慎次のキャラクター描写
本作では、室井慎次の人間性がより深く掘り下げられています。かつて警察組織改革を目指しながらも、その志を果たせずに退職した彼は、秋田の田舎で静かに暮らしながら、犯罪被害者や加害者の子どもたちを里子として迎えています。
寡黙で厳格な印象のある室井ですが、子どもたちとの関係の中で、彼の温かさや不器用ながらも真摯な愛情が伝わる場面が多く描かれています。特に、タカやリクとのやり取りでは、言葉少なながらも彼らを支えようとする姿勢が際立ちます。
また、過去の事件に関わる出来事が再び彼の前に現れた際、元警察官としての鋭い勘と正義感が呼び覚まされる様子も見どころの一つです。表情や立ち居振る舞いから滲み出る経験と苦悩が、より一層キャラクターに深みを与えています。
シリーズを通じて成長してきた室井慎次の、新たな一面が見られる作品となっています。
作品のヒューマンドラマ要素
この作品では、人間関係の描写が細やかに展開されており、特に室井慎次と里子たちとの関係が感動的に描かれています。里親となった室井は、高校生のタカと小学生のリクと共に生活し、彼らにとって父親のような存在になっていきます。厳しくも温かい関係の中で、彼らの成長や心の変化が丁寧に描かれており、観る者の心を揺さぶる要素となっています。
また、過去の事件の影響を受けながらも、室井は静かに新しい生活を築こうと努力します。しかし、里子となった子どもたちが抱えるトラウマや、彼自身の過去との向き合い方が作品の重要なテーマとなっており、単なる刑事ドラマではなく、人間ドラマとしての深みが加わっています。
特に印象的なのは、タカが母を殺した犯人と対峙するシーン。室井の静かな支えのもと、タカが自らの言葉で強い決意を示す場面は、涙なしには見られません。人間関係の機微や、成長していく登場人物たちの姿が際立つ、重厚なヒューマンドラマに仕上がっています。
物語の伏線と後編への期待
『室井慎次 敗れざる者』では、多くの伏線が張られ、後編『生き続ける者』への期待を高めています。序盤から登場する日向真奈美の娘・杏の存在は、作品全体に不穏な空気を漂わせ、彼女の目的や意図が謎として残ります。
また、過去の事件と関わりのある人物が次々と登場する点も注目される要素です。特に、劇場版2作目で描かれた”洋梨事件”の関係者が再び物語に絡むことで、事件の真相やその後がどう描かれるのかが気になるポイントとなっています。
さらに、タカが母の仇と向き合う場面では彼の成長が見られたものの、リクの過去や彼の父親がどのように関わるのかは明らかになっていません。終盤ではリクの父親が出所し、物語が大きく動くことを示唆しており、後編での展開が待ち遠しくなります。
そして、エンドロール後に流れた新城の「青島との約束はまだ終わっていない」というナレーションが、室井の今後にどのような影響を与えるのかも気になるところです。警察を去った室井が再び過去と向き合うのか、そして彼の信念はどのような結末を迎えるのか、後編での回収が期待されます。
懐かしいキャラクターの登場
『室井慎次 敗れざる者』には、「踊る大捜査線」シリーズでおなじみのキャラクターが再登場し、ファンにとっては懐かしさを感じられる要素が満載です。特に注目されるのは、新城賢太郎(筧利夫)の登場。彼は秋田県警本部長という立場で室井と再び関わることになり、かつてのライバル関係とも言える二人のやり取りが再び描かれています。
また、物語の鍵を握るキャラクターとして、日向真奈美(小泉今日子)の娘・杏(福本莉子)が登場。母の影を感じさせるミステリアスな雰囲気を持ちながらも、彼女の目的や意図は謎に包まれています。過去の因縁を感じさせるこの展開は、シリーズのファンにとって大きな見どころとなっています。
さらに、青島俊作(織田裕二)の名前も劇中でたびたび登場し、彼の現在の立場についても言及されています。直接の登場はないものの、回想シーンを通じて青島の存在感が際立ち、シリーズの歴史が感じられる演出となっています。
シリーズファンにとっては、過去の登場人物と物語の繋がりを楽しめる内容になっており、新旧キャラクターの交差が作品の魅力を一層深めています。
評判が良くない点
物語のテンポの遅さ
物語がじっくりと進行することに対して、一部からは「テンポが遅い」との指摘があがっています。特に、室井慎次が秋田での生活を築く過程や、里親としての姿が丁寧に描かれているため、スリルやアクションを期待していた観客にとっては、展開がもどかしく感じられる場面もあるようです。
また、前後編の二部構成ということもあり、事件の核心に迫る場面が後編へと持ち越されているため、「盛り上がる前に終わってしまった」という印象を受けた人も少なくありません。序盤から伏線が張り巡らされ、さまざまな要素が少しずつ積み上げられていくスタイルは、じっくりとドラマを味わいたい人には向いているものの、スピーディーな展開を好む人には物足りなさを感じさせる部分となっています。
それでも、後編への期待感を高める構成として機能しており、すべての伏線がどのように回収されるのかを楽しみにしている観客も多いようです。
過去作の映像を多用しすぎ
本作では過去作の映像が随所に挿入され、「踊る大捜査線」シリーズの歴史や登場人物の背景を振り返る構成になっています。しかし、その多用ぶりに対しては賛否が分かれる声もあります。
特に、青島俊作をはじめとする過去のキャラクターの映像が頻繁に挿入されることで、ファンにとっては懐かしさを感じられる反面、新作としての独立性が弱まっていると感じる人もいるようです。過去の映像を効果的に使うことは物語の理解を助ける側面もありますが、過去の名シーンに頼りすぎていると捉えられる部分もあります。
また、回想シーンが多いため、物語の進行が停滞しているように感じる観客も少なくありません。特に、「レインボーブリッジ封鎖できません!」のネタが何度も登場する点については、一部のファンから「しつこい」との指摘も出ています。
シリーズを通してのつながりを意識した演出ではあるものの、新たなストーリーを求める視聴者にとっては、過去映像に頼りすぎる展開が気になるポイントになっているようです。
室井慎次 敗れざる者はこんな人におすすめ
「踊る大捜査線」シリーズのファン
「踊る大捜査線」シリーズを愛するファンにとって、本作は見逃せない作品です。長年親しまれてきたキャラクターたちの「その後」が描かれており、特に室井慎次の人生の変遷がじっくりと語られています。
過去作の映像が織り交ぜられ、青島俊作や和久平八郎といったおなじみのキャラクターの存在感を感じられるシーンが随所にあります。新城賢太郎(筧利夫)やかつての事件関係者が登場することで、シリーズの歴史を振り返りつつ、新たな物語として楽しめる構成になっています。
また、レインボーブリッジ封鎖の名セリフがネタとして何度も登場し、過去作品を知るファンにとってはクスッと笑えるポイントもあります。「踊る大捜査線」らしいユーモアを感じつつ、シリアスなドラマが展開されるため、シリーズを愛してきた人には特におすすめできる作品です。
人間ドラマをじっくり楽しみたい人
本作は、アクションやスピーディーな展開を求める映画ではなく、じっくりと人間関係を描くヒューマンドラマとしての側面が強い作品です。特に、室井慎次と里子たちとの関係が細かく描かれており、親子のような絆を築いていく過程が丁寧に表現されています。
物語は、室井が秋田で新しい生活を始め、タカやリクといった子どもたちと向き合いながら成長していく姿に焦点を当てています。室井自身も里親として「一年生」でありながら、彼なりの不器用な優しさで子どもたちを支えようとする姿勢が印象的です。特に、タカが母親の仇と向き合う場面では、室井の静かな支えと、タカの葛藤がリアルに描かれ、感動を呼びます。
また、日向真奈美の娘・杏の登場や、過去の事件と関わる新城との再会など、登場人物たちの過去と現在が交錯することで、単なるサスペンスではなく、それぞれのキャラクターが抱える心情や葛藤が深く掘り下げられています。
登場人物の心理描写をじっくりと楽しみたい人や、温かさと切なさが交錯するヒューマンドラマが好きな人におすすめの作品です。
前後編作品の伏線回収を楽しめる人
本作は二部作の前編として、多くの伏線が張り巡らされています。そのため、物語の全貌が明らかになるのは後編『生き続ける者』を観てからになります。
冒頭から登場する日向真奈美の娘・杏の存在や、過去の事件とリンクする展開が随所にちりばめられています。特に、20年前の”洋梨事件”とのつながりや、刑務所から出所したリクの父親の動向は、後編で重要な鍵を握ると考えられます。
また、新城賢太郎の「青島との約束はまだ終わっていない」という言葉が、室井の今後にどう関わってくるのかも気になるポイントです。現在の室井は警察を離れ、里親としての新しい生活を送っていますが、この言葉が意味するものが後編でどのように回収されるのか、期待が高まります。
前編だけでは結末が見えない構成になっているため、伏線がどのように回収されるのかを考えながら映画を楽しむ人にとっては、特に魅力的な作品と言えます。

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室井慎次 敗れざる者 作品情報
解説・あらすじ
1997年に放送開始され映画版も大ヒットを記録したテレビドラマ「踊る大捜査線」シリーズで柳葉敏郎が演じる人気キャラクター、室井慎次を主人公に描く映画2部作の前編。
これまで現場の捜査員のために戦い続け、警察の組織改革に挑むなど波乱に満ちた警察人生を歩んできた室井慎次。27年前に青島と交わした約束を果たせなかったことを悔やむ彼は、警察を辞めて故郷・秋田へ帰り、「事件の被害者家族・加害者家族を支援したい」との思いから、少年たちと穏やかに暮らしていた。ある日、室井の前に謎の少女が現れる。彼女の来訪とともに他殺と思われる死体が見つかり、室井はその第一発見者となってしまう。その少女・日向杏は、かつて湾岸署が逮捕した猟奇殺人犯・日向真奈美の娘だった。
室井役の柳葉敏郎、新城賢太郎役の筧利夫、沖田仁美役の真矢ミキらおなじみのキャストに加え、日向杏を演じる福本莉子や、齋藤潤、松下洸平ら新たなキャストも出演。スタッフ陣もプロデュースの亀山千広、脚本の君塚良一、監督の本広克行ら「踊る大捜査線」シリーズを支えてきたメンバーが再結集した。2024年製作/115分/G/日本
配給:東宝
劇場公開日:2024年10月11日
みどころ
『室井慎次 敗れざる者』の最大の見どころは、シリーズを通して描かれてきた室井慎次というキャラクターの新たな側面が明らかになる点です。警察を辞め、秋田の田舎で静かに暮らす室井が、犯罪被害者や加害者の子どもたちを里親として迎え、新たな人生を歩もうとする姿が丁寧に描かれています。
特に、タカとリクという二人の子どもとの関係性が深く掘り下げられ、彼らとの生活を通じて室井自身も変化していく様子が感動的です。タカが母親の仇と向き合う場面では、室井の静かな支えがありながらも、タカ自身が決意を固める成長の瞬間が見られます。
また、過去作とのリンクも魅力の一つ。日向真奈美の娘・杏の登場や、”洋梨事件”に関連する人物が再び現れることで、長年のシリーズファンにとっては懐かしさとともに、新たな謎や伏線に引き込まれる展開となっています。
さらに、エンドロール後に語られる「青島との約束はまだ終わっていない」という新城の言葉が、後編『生き続ける者』への期待を一層高めています。警察を去った室井が、再び過去と向き合うのか、そして彼の信念はどのような結末を迎えるのか、シリーズファンならずとも気になるポイントでしょう。
シリーズの持つヒューマンドラマの要素と、ミステリーサスペンスとしての緊張感が絶妙に組み合わさり、重厚な作品に仕上がっています。
まとめ
『室井慎次 敗れざる者』は、過去の「踊る大捜査線」シリーズを知るファンにとって懐かしさを感じさせながらも、新たな物語としての魅力を持つ作品です。警察を去った室井が、田舎で新たな生活を築こうとする中で再び事件と向き合い、里子たちとの関係を通じて自身の信念を問い直していく様子が描かれています。
前後編の二部作ということもあり、伏線が多く張られているため、物語の真相は後編『生き続ける者』で明らかになるでしょう。テンポの遅さや過去映像の多用に対する意見もありますが、室井の人間ドラマとしての深みや、シリーズファンにとっての楽しめる要素が詰まっています。
後編でどのように伏線が回収され、室井がどのような決断を下すのか。その結末を見届けるためにも、『生き続ける者』の公開が待ち遠しい作品です。

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